ぱーこシティ

選ばれし者たち

今日の一句
蕗の薹人には人の生きる道　浮浪雀

長い一日だった。

今日は私が３年前に教員生活最後に担任をやった生徒たちが卒業する日
この生徒が卒業するのは奇跡だ、と思った生徒が卒業していく。
奇跡はあるんだよ。
長い一日のはずだ。

まず勤務先の駅を降りると、前になにやら見知った背中が歩いてる。
そう、あのK氏である。
にやにや笑いがチャシャ猫のように頭上に浮かんでいる、あのK氏である。
いや、伝えたい用事もあった。
勤務先に行く道すがら、必要な打ち合わせはずべて済んだ。

卒業式
教頭の始めの言葉が
生徒の皆さん、マスクをしている人はとりましょう。
女子校文化である。
まずは生徒の皆さんと呼びかける。
取りなさい、ではなく、取ってください、でもなく
取りましょう、である。

次に校長先生の話となる。
校長先生の話はツボを押さえて、後に続く挨拶のネタ振りをして妥当に終わる。
最後のネタは次の様なものだった。

人生も終わりに迎えた男が過去を振り返る。
海岸である。
砂浜にその人の足跡が点々と続いている。
自分ひとりで歩いてきたと思っていたが
振り返ると自分の足跡に寄り添ってもう一つの足跡が続いている。
我が子よ、私はお前と共に歩んできたのだ。
主よ、ならばなぜ私が一番苦しんでいたときに私を見放したのですか
彼の指さす先には、それまでもそれ以後もつかず離れず二人並んでいた足跡が
そこだけ一人とぼとぼと歩んでいた跡しかなかった。
我が子よ、それは違う。そのところは私がお前を抱えて歩いていたのだ。

これでやられる。
私も始めてこの話を読んだときは感動した。
しかし
このトリッキーな話を２度目に聞くと、感動は薄い。
なんだか手の平に乗せられている感じが残る。
少し悔しい。

私の考えたこの話に続きはこうだ。
男は渾身の力を込めて言った。
主よ、それは違います。
その場所は私があなたを背負って歩いていたのです。
主は言われた
我が子よ、それでいい。

そんなしょうもないことを考えながら
次の挨拶を待っていたら、真打ちが登場した。
精霊を待ち望むあの神父様である。
挨拶ののっけから沈黙が支配する。
私は来たな、と思って固唾をのんで見守っていた。

神父様の話はやはり期待を裏切らなかった。
いや話の中身はどうでもよろしい。

この大事な局面で自分を投げ出して
精霊の赴くままに任せるという捨て身の技である。

神父様の話が終わったとき
卒業生たちが待ち構えていたように立ち上がった。
神父様のお辞儀を受けるために、である。
彼らにも自分を捧げるということがどんなことだか
通じたに違いない。

これもまたミラクルである。

そして、答辞を読んだ卒業生代表が
これまた真情あふるる企みのこもった挨拶だった。
これで卒業生がやられた。
よく泣く卒業式である。
今時どき珍しい。

49名の卒業生一人ひとりに証書を手渡しする。
されに２時間。効率優先のこの時代に許されざる暴挙である。
これだけ充分贅沢なのに、この学校の式では必ず合唱が入る。
在校生の歌は先輩の作詞作曲の歌。
卒業生の合唱は作詞作曲が自作自演である。
それも混声合唱でやる。

ここで泣きながら歌わないでいつ泣くのだ。
そういう合唱である。

それも終わって、恒例の記念撮影
それから最後の終礼となる。
私は現担任の先生に挨拶に呼ばれていた。
１年の担任に華を持たせてくれよう、との配慮であろう。
次の仕事があったが、これは受けなくてはならない、と
出番を待つこと30分
最後の終礼が簡単に終わるわけがない。
結局、待っている間に行かなくてはならない時間となり
なくなくきっぱり諦めて業務0を後にした。

次の業務は中学１年生の放課後補充指導。
言ってみると人数が増えていた。
これもいつ通りこなした。ここも今日が最後なのだった。
私の黒歴史時代の場所である。
（まあ、そのことがあったので引き受けたのだが）
一度終われば次がない、というのが私ども老人Zの特権である。
もうこの生徒たちとは合わない。
そう運命づけられている。
それは若いときにはない感覚だった。

それからまたとって返して
久しぶりのリーマン例会
例の如くに言いたい放題
オマエ、ゾンビになりたいのか
ここでも一つ覚えを繰り出すしかない。

楽しい会であった。

近来になくまたしても痛飲
無事下車駅で降りて自宅にたどり着いた
轟沈前の一仕事がこのブログである。