ぱーこシティ

読書会

今日の一句
人生卒業ゾンビ学校入学式　浮浪雀

ネットで見つけた情報を頼りに読書会なるイベントに行ってみた。
目的は３つ。
１．本の筆者を知っている。相手が自分を覚えているか知りたい
２．集まった人がどんなことをいうのか知りたい
３．このイベントがどのように成立しているか知りたい。
目的はすべて完了した。

晴海埠頭の人工的にでっち上げたビルの4階のホールが会場
椅子が8脚、丸く置かれている。
そのグループがAからＺまであるから全部で26グループあることになる。
集客数は200人を超える。
1時間半1時間半1時間のタイムスケジュールで
本を題材に自由に話合う。
ボランティアでファシリテーターと呼ばれる進行係の人がいる。
一つのグループにファシリテーターは2人。
ルールは人の意見を否定しない、というもの。
本や筆者の否定はもちろんかまわない。
話題は恋愛もので、多少えっちな内容を含む、
とくれば集まる人は20代から30代の女性が多い。
男女比は４：６ぐらいで、男性は20代30代の男性が主だが
40代50代のやんちゃじじいもちらほら見える。
流石に私の様なゾンビ老人はいない。
この企画の初参加者が半分ほど、
あとはリピーターである。

本の内容をネタに自分の恋愛観を話したりする。
初対面で読書会だというと普段は話せない核心にいきなり触れることが出来る。
構造的には、課題ありのエンカウンターグループである。
壇上の筆者のうちの一人と30年前にエンカウンターグループをやったことがある。
私はしがない教員として人生を終えるが、
筆者の方はTVにも出たりする著名人となった。
30年間、連絡をしたこなどもちろんない。
私は本にサインしてもらうか、などといじけたことを考えていた。

話合いをしている各グループに著者がやってきて
読者から直接質問を受けてお話をする。
私のグループに来たとき、始め塾の仕事をしているという男性が
自分は結婚がうまくいかない、と切りだした。
筆者は相手の立場を尊重しつつ、自分の考えを述べていた。
私は話題が途切れるのをうかがっていた。
ぱーこですが、わかりますか、
と発言すると、相手は
ぱーこさん、ご無沙汰しています。30年ぶりでしょうか、
と返事をした。
名前まで覚えていたのだ。
それで充分だった。
私もまるで変わっていないな、とよく言われるが、
筆者もほとんど変わっていなかった。
30年前より、厚みが出て人生をきちんと歩んできたことが感じられた。
この2冊の本のうち、後の方がいいと思いました。
と感想をいうと
ぱーこさんならそういうと思いました、とそつがない対応である。
スタッフが、時間がきましたので、と筆者を促して彼は次のグループへ行った。

グループ内の話題は、それなりに関心の持てるものだった。
始めのグループで、こいつは許せないインチキ野郎がいた。
エンカウンターグループなら勝負するところだが、これは読書会である。
人の意見を否定してはいけないルールがある。
私は意見どころかこいつの人格を否定したいのだ。
すごい美人である。臨床心理士で大学で恋愛学の講義をしたり、
いろいろなクライエントさんの相談にのっている、という。
夫は精神科医で心理学を学んできました、子どもが一人います、
といけしゃあしゃというではないか。
リア充感を隠しつつダダ漏れさせている。
その割には、椅子の位置を気にしたり、自分は他人に配慮できるんだよと
さりげないアッピールがある。
私からみれば、そのいちいちが挙動不審である。

それ以外はみな真面目に自分の事を語っていて好感が持てた。
自称腐女子の変態女性はその覚悟がかっこよかった。
目的２は達成された。

講演会は筆者の友人を壇上に上げて
みな著作業もしているので、自分の作品のプロモ−ションをしていた。
私が30年ぶりに会った著名人は
ラカンという心理、哲学をやっている人は
人間は皆狂っているので、変態として生を全うするのが健全なあり方だと言ってます、
と紹介したりした。そういうジャックラカン評は始めて聞いた。
自分の言葉でいかにもの内容を言うあたり、なかなかのものである。

目的3も完了した。

この後、会場はそのまま懇親会に突入した。
この会ではすでに40組の結婚が成立している。
読書会と銘打ったオフ会で、私の知人作家は
このイベントの影の目的はリア充を増やすことです、と冗談交じりにいっていたが、
あながちうそでもあるまい。
私は盛り上がる会場を一人後にして、外へ出て一服していると、
もう一人の作者（女性経営者にしてコンサルタント美人）がやはり喫煙しに出てきた。
私は相手の名前をさん付けで呼ぶと、失礼なことを聞いてもいいですか、と切り出した。
相手は一瞬身構えたが直ちににこやかにほほえんで、どうぞどうぞと応じた。
この本は編集の人とずいぶん相談したんでしょう、と言った。
ゴーストライターが書いたんでしょう、と言いたかったが言えなかった。
相手は、もちろんずいぶんやりとりをしましたよ、と余裕で答えてくれた。
私は、ありがとうございました、と一礼して一人バス停留所へ向かった。

行く前はなんだか場違いな所へ行って
つまらないわびしい気持ちで会場を後にすることなるかもしれない、
と思っていたが、有意義な時間だった。

次回も気になる本を扱うときには参加してもいいかもしれない、と思った。
2500円で5時間近く楽しめた。コスパ良好である。

キースエマーソン、自殺。